つれづれ雑記帳

好きな言葉をいろいろ集めてみようと思う。

幸村誠 プラネテス2巻

  これまでいろんな漫画や小説から多くの影響を受けてきました。

その中で、特に大きな影響を受けたと感じる作品から紹介していきたいと思います。

まずは幸村誠プラネテスです。

 

 舞台は人類が宇宙に進出し、宇宙産業によって支えられている世界。

主人公・ハチマキは宇宙ゴミスペースデブリ)を集める仕事をしています。

将来の夢は自分の宇宙船を持って、自由に宇宙を飛び回ること。

 

 1巻では宇宙とはどういう場所か、そして宇宙で生きてゆく人々の生き様が描かれています。

印象的だったのは宇宙が人間にとっては死の世界であることが、ことあるごとに協調されていること。

そして、そんな宇宙に心酔する人々です。

 なぜ宇宙が好きなのか。憧れるのか。理屈を越えた何かが、彼らを宇宙に縛り付ける。

その場面に、ものすごく共感をしていまいます。

 

 前置きが長くなりました。私が一番好きな2巻の話です。

2巻では新しい人物・タナベが登場します。

木星往還船の乗組員試験を受けるハチマキの後釜として入ってきたタナベ。

慣れない宇宙で弱ったところに、ハチマキが檄をとばします。

「甘えにつながる物は全部捨てちまえ。

 タマシイ売っちゃえよ。この世界にはその価値がある。」

そう言ってハチマキが去った後に、タナベは一言。「愛がない。」

 

 ここでハチマキとタナベの人生観の違いがわかります。

この2人が関わり合いながら、2巻はすすんでゆきます。

 

 さて、そんなやりとりの裏で地球から通信が入ります。

宇宙に葬られた宇宙船員・ファドランの棺桶の回収です。

家族に回収した遺体をどうするか確認をすると、宇宙に放出して欲しいとのこと。

家族を顧みず、ただひたすら宇宙だけを愛した父の願いは宇宙をさまよい続けることだと家族は考えました。

 

 そこでタナベが動きます。棺桶を奪い、ろくに動けない船外へ。

宇宙船員が全てを宇宙に捧げることを、くだらないと一蹴して

家族や両親、友達に愛されている人間が、永遠に宇宙をさまようべきではない。

愛のある選択をすべきだとぶちかまします。

 そこに反論するハチマキ。

「なかよしこよしは自分の人生を生きる度胸のない奴の言いぐさだぜ。」

「独りで生きて、独りで死ぬんだ。それが完成された宇宙船員(ふなのり)だ!」

 

「独りで生きて、死んで。なんぜ満足できるんですか。バカみたいよ。」

「宇宙は独りじゃ広すぎるのに。」

 

 このやりとりは、何回読み返しても目頭が熱くなります。

最後のセリフは真っ黒いページにぽつんと置かれ、とても寂しそうです。泣きたくなります。

私自身は、どちらかというとハチマキよりです。だからこそ、タナベの言葉が突き刺さります。

 

 今までの人生で、ハチマキのこのセリフを何度も何度も反芻してきました。

「独りで生きて、独りで死ぬんだ。それが完成された人間だ。」

 正直、間違っていると思います。

人と関わることの素晴らしさを否定して、自分のことしか考えない利己主義名人間の都合のいい詭弁だと思います。

 うまく整理できませんが、このやりとりから見えるハチマキの弱さが、自分の弱さと重なって、タナベの言葉がすごく心に響くんですよね。

 

 生きるって、人と関わっていくって、怖くて、難しいな。

プラネテスを読みながら、いつもそんなことを思います。